伊勢新聞

2018年3月22日(水)

▼業務請負契約か労働者派遣契約か―米国人元英語教師が勤務先だった学校法人と仲介業者を相手どった損害賠償請求訴訟は、契約の形態がそのどちらだったかが一つの焦点になるのだろう。仲介業者は「事実でないことをでっち上げており、事実認定に相違がある」

▼でっち上げかどうかはともかく、一つの職場で働く複数の非正規労働者を見て、どちらの契約かを見分けるのは難しい。労働者自身も、業務請負契約だったらこうすべきだが、労働者派遣契約だからこうするなど、一つ一つの仕事で判断し行動することなど困難ではないか。事実関係の解釈に違いは出きやすい

▼かつて労働者派遣業務は原則禁止で、特定業種に例外的に認められていた。それ以外の業種は業務請負契約を結ぶ。派遣労働者が派遣先の管理監督下に入るのに対し、業務請負契約の労働者は請負先と締結した請負業者の指揮に従う。請負業者が個人なら個人事業主となり、自ら結んだ契約に従って行動することになる

▼授業計画や勤務時間、遅刻や早退などの取り決めが契約にどう定められていたかだが、元講師は契約時の説明がなかったと言っているらしい。誰の説明を期待したか。請負契約の認識に違いがあったのかもしれない

▼が、四日市税務署は労働者派遣契約と認定したという。実態は、請負契約とは言えないというだろう。個人事業主ではないということでもあるが、在留資格は、三年から個人事業主としての一年に変更されたという。「正義が欲しい」という元講師の願いは、訴訟相手だけでなくこの国の制度にも向けられている。