<まる見えリポート>津市営温泉施設 あのう温泉、廃止危惧 

【廃止が危惧される「あのう温泉」=津市安濃町東観音寺で】

三重県津市安濃町東観音寺の市営温泉施設「あのう温泉」の運営をめぐり、津市と地元住民らが話し合いを始めた。市の計画の中で再整備の検討対象に挙がっているため住民が危惧。市は廃止の意向を否定しているが、施設の運営改善を求める署名運動にまで発展している。利用者の減少に伴う赤字経営が背景にある。

あのう温泉は安濃総合支所の向かいの安濃交流会館内にある。旧安濃町が合併前の平成17年10月に開業し、13年目となる。茶褐色の濁り湯で塩味がある源泉と温めた浴槽の2つがある。

利用料は13歳以上の大人が300円。木曜日と年末年始を除いて毎日営業している。利用者は地元住民のほか市内外から一日平均150人ほど。

市の計画の中で再整備の検討対象に挙がり、今年に入ってから地元に廃止への不安が広がった。地元自治会長や旧安濃町議らが廃止阻止に向け、住民や利用者から署名を集め始めた。2月中旬には自治会連合会長らが市役所を訪れ、約1400人分を前葉泰幸市長に手渡した。前葉市長は「あのう温泉を廃止するつもりはない」と話す。

ただ、赤字を抱えている。市は4カ所で温泉施設を運営し、一日平均利用者数の最多は一志温泉やすらぎの湯(一志町)が約1100人。下之川住民交流センター(美杉町)が約50人で最少。

一志温泉でも「利用者の減少で収入が減り、経営は厳しい」という。昨年4月に入館料を改定している。4施設とも源泉を温めるため燃料費がかさむ。

あのう温泉は今月、利用者に向け、掲示で「経営が厳しく、赤字の状況」と説明。新しい利用者の紹介を呼び掛けた。施設の外観が温泉と分かりづらく、知名度が低い。

秋田県横手市では、合併前の旧町村から引き継いだ温泉の民間譲渡をめぐって市民らが反発。山形県鶴岡市は温泉の廃止を決めたが、地元住民が存続を求め、住民らでつくる組織に運営を委ねた。

住民の交流や健康の増進を目的に温泉施設を運営するが、廃止の決定権は市が握る。他市では住民が知らないうちに廃止が決まり、騒動が起こった。住民らは杞憂を願いながら署名運動を続けている。