伊勢新聞

2018年2月25日(日)

▼旧優生保護法下で知的、精神障害者らが不妊手術を強制された問題で、鈴木英敬三重県知事が「まずは国が対応の指針を明示するのが筋」。加害者側に連なりながら「まずは」とか「筋」とか。評論家のような気がしなくもない

▼昭和38―54年度に13歳の少女ら49人を「手術が適当」と判断したのは国ではなく県の優生保護審査会。うち何人に施術したか、確認の資料もない。人ごとの気もしてくる

▼旧優生保護法下で、最も悲惨な人権問題はハンセン病の隔離政策。療養所内で断種、堕胎が横行した。県は「聖地三重」「神都浄化」を合言葉に強力に無癩県運動を推進。患者の多い地域だったが「県当局の英断は……次々に病友を(長島)愛生園に送り、無癩県三重の実は正に明日に期待し得べき迄に」と、癩予防協会県支部の記念誌に書いている

▼〝民族浄化〟につながる思想が生まれかけた県としては、精神障害者らの不妊手術問題で引き継いでいたことはなかったのか。「情報開示請求があれば丁寧に対応する」と受け身でお茶を濁してはなるまい

▼池田小事件(平成13年)では、触法精神障害者の医療観察が強化された。相模原刺殺事件では、退院後の患者ケアが検討された。保安処分としての精神科病院の役割はいまだ健在

▼癩予防法の憲法違反が確定して、当時の北川正恭知事はハンセン病元患者に対し謝罪メッセージを送った。野呂昭彦知事は長島愛生園を訪問して、直接謝罪した。「国が主導し、国が指揮監督」した「今の時代では全く考えられない制度」として済ますわけにもいくまい。