伊勢新聞

2018年1月26日(金)

▼医師法違反(医師でない者の医業禁止)の疑いで昨年11月逮捕された介護福祉サービス会社代表の公判が始まり、冒頭陳述で、県が一昨年1月調査し、指導していたことが明らかになった。逮捕は昨年9月、県医務国保課からの情報提供である。調査、指導というものがどんなものか、ちょっと心もとくなる

▼容疑は、医師免許を持たずに採血し、壊死部分(皮膚)をハサミで除去するなどの医療行為をしたこと。その深刻さとは別に、壊死部分除去は昨年7月だから県の調査、指導から1年8カ月、違法行為はエスカレートしていたことになる。いったい何を調査、指導したのか

▼警察に情報提供した県医務国保課は健康福祉部医療対策局に属する。職務は医師等医療従事者法の施行や医療職免許事務など。医師法違反問題の担当部門で、県民からの通報も受けたのに違いない。一方、介護保険サービス事業者の指導、監査担当は同じ健康福祉部でも福祉監査課。部内局で独立性の高い医療対策局とは指示系統が異なる。調査、指導したのが福祉監査課で、警察への情報提供が医務国保課だとなると、無為に過ぎた1年8カ月間が何となく見えてこないか

▼県の職務分掌で「指導及び監査」も、ダブルスタンダードを伴う。「指導」は健全育成を、「監査」は規範順守を求めるからだ。右手でビンタし、左手でなだめているようなところがある。国の福祉部門と医療部門の、それぞれ相手にコンプレックスと見下す姿勢を、県も持ち続け、福祉と医療の溝といわれた。いまだ健在であることを事件は物語っている気がする。