伊勢新聞

<まる見えリポート>多気郡3町長、改選年 大台、12年ぶり選挙戦

三重県多気郡の3町長は今年、改選を迎える。多気、大台両町長選は23日告示、28日投開票。現職が引退する大台町長選は新人3人が出馬する一方、多気町長選は現職の無投票3選の公算が大きい。明和町長は任期満了が12月11日で、3期目の現職の去就が注視される。情勢と町政の課題を見た。

(松阪紀勢総局長・奥山隆也)

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大台町は3期目の尾上武義氏(70)が引退し、いずれも無所属新人の会社社長大森正信氏(68)、町議元坂正人氏(72)、前町議堀江洋子氏(56)=50音順=が立候補を表明。選挙戦は12年ぶりとなる。

旧宮川村の大森氏に対し、元坂、堀江両氏は旧大台町出身。旧宮川村1人、旧大台町2人の構図は平成18年の2町村合併後初の町長選と同じ。旧宮川村長の尾上氏は地元を固め、旧大台町に食い込み、旧町の票を奪い合った旧町長と元坂氏を大差で退けた。

今回、対決構図は似ているが、旧宮川村長だった尾上氏と違い大森氏は新人。次の町長は旧大台町からという声もある。

有権者数約8300人のうち、旧大台町約5600人に対し、旧宮川村はその半分の約2700人。

人口減と少子高齢化が激しい同町は一方で、町全体が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「大台ケ原・大峯山・大杉谷エコパーク(生物圏保存地域)」になっている。

エコパークは国内では屋久島や白山、南アルプスなど7地域あり、世界に向けて大自然をアピールできる。28年に登録範囲が町全域へ拡大された際、尾上町長は「外国人観光客の取り込みに力を入れる」と意欲を語った。

同年には観光地づくりの舵取り役「DMO(デスティネーション〈到着地〉・マネジメント・オーガニゼーション)」として、同町観光協会を母体に旅行会社「ベルデ大台ツーリズム」が発足した。訪日外国人客増を掲げる国の支援があり、複数の観光施設の連携や訪問客のデータ分析に取り組む。

同社はアウトドア愛好家をターゲットに、宮川や大杉谷を生かしたプログラムの企画・運営を手掛ける。今春に2回目を迎える「大台アウトドアフェスティバル」では、森林の中を走るトレイルランニングや三瀬谷ダム湖で大型ボードの上に立ちパドルをこいで水面を移動するサップを繰り広げる。新たにNPO大杉谷自然学校で人気の森遊び「もりのようちえん」や、大杉谷林間キャンプ村のたき火を楽しむ「キャンピング」が登場し、連携を広げている。

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多気町長選は現職の久保行央氏(70)が3選を目指して立候補を表明。現時点で対抗馬が出る動きはなく、前回に続き無投票の見通し。

同町へは、リゾート運営のアクアイグニスやイオンタウン、ロート製薬などが伊勢道の勢和多気インターチェンジ(IC)近くに滞在型複合施設「アクアイグニス多気」(仮称)を、32年に開業を予定している。7年操業の液晶パネル製造シャープ三重工場に続く大型進出となり、波及効果に期待がかかる。

同町は昨年、「人口に対するミシュラン星の密度が世界一高い」スペイン・サンセバスティアン市と「美食を通じた友好の証」を締結。イタリア食科学大学、三重大学、アクアイグニスとで「食」に関する連携協定を結び、日本校誘致を目指す。

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人口減少に歯止めをかけようと懸命な両町とは対照的に明和町は松阪、伊勢両市のベッドタウンとして転入を主に人口増加が続いている。昨年12月は前年同月比33人増の2万3198人。平成の大合併も単独で切り抜けた。27年には「祈る皇女 斎王のみやこ斎宮」が文化庁から日本遺産に認定され、施設整備や観光に弾みが付いている。

明和町長選は現職の中井幸充氏(70)が態度を明らかにしていない。26年の前回は同年の町議会6月定例会で出馬表明し、新人の元町議を大差で破って3選を果たした。今のところ、他に出馬表明はない。