伊勢新聞

2018年1月17日(水)

▼菰野町・廣幡神社の「どんど焼き」で、氏子総代責任役員の市川吉康さんが行事の意味を地元小学生ら150人に語ったという。聞いてみたかったと思ったのは、元日未明の初詣で、大かがり火の回りに張り巡らしたロープに「勝手に投げ入れずに係の者へ」という板がぶら下がっていたからだ。燃え上がる穴をのぞくと、破魔矢など昨年の縁起物が見える

▼初詣は恒例だが、どんど焼きはご無沙汰。増え続ける縁起物の処分に困って、大かがり火を守る係の人に聞いたことがある。7日でもどんど焼きの15日でもいいし、今でも構わないと言われ、放りこんだ。正月飾りは神様を迎える準備で、燃やすのは神様を送る意味がある。いくら前年のものでも元日では神様も戸惑うかもしれないと宗旨替えしたか、燃やすのは構わないが、危険だから係員へという趣旨か

▼激動の世の中だから、神様もおちおちできない。1月1日が大正月で、15日を正月が終わる小正月として、さまざまな行事が生まれた。どんど焼きもその一つで、正月飾りを燃やして五穀豊穣を願った

▼子どもたちが運営するケースが多かったから、廣幡神社が児童らに由来を語るのは理にかなっているが、神社が用意したしめ縄を炎に勢いよく投げ込んだというのが、少々ほろ苦い

▼自動車に飾るのを見なくなったが、家でも、持ち寄るほどはないのかもしれない。成人の日が移動するのに合わせて、どんど焼きも毎年日替わりで実施する神社もあるそうだ。小正月ももはや死語かもしれない。迎えた神様がいつお帰りになるか。それは神のみぞ知る―。