伊勢新聞

2018年1月16日(火)

▼トランプ米国大統領がアフリカ諸国などを評したとされる侮蔑発言が、本紙は共同電で「くそったれ国家」だったが、NHKが「不潔な国々」とやや上品に報じたのを別にして「便所のような国」「肥だめ国家」など、各社邦訳に苦心したらしい

▼原語はシットホールとされるが「くそったれ国家」と「便所のような国」などのどちらが的確か。便所の直訳はトイレットだが、日常会話で使うことは、日本同様、世界でそう多くはない。日本ではお手洗い、米国はバスルームなど使う。スペインでも便所を使って笑われたことがある

▼トランプ大統領発言が報じられた14日の未明にたまたま見た米国アクションスリラー映画『イコライザー』で「くそっ」「くそ野郎」が連発されるのに閉口したのは、やはり「くそっ」の言葉が飛び出した日本のテレビドラマの再放送を見たあとだったからだ。リアリティーということか、最近のテレビドラマはサスペンスだろうがホームドラマだろうが、乱暴で下品な言葉を特に女性に使わせる

▼ロシア要人の妻の靴選びに同行した通訳の米原万里が書いていた。銀座の靴店で百足を超える靴を試しながら、始めは「イマイチね」「色がちょっと」と品よく振る舞っていたが、次第にドスの利いた声になり、ついに「ガヴィノー(くそ)!」。イタリアでは少年が「メールダ!」、フランスの友人が「メールド!」、ポーランドでは追い越されたタクシーの運転手が「ホーヴノ!」

▼腹立ち紛れの言葉は各国共通というのが米原の体験談。トランプ発言はどれが適訳か、言うまでもあるまい。