伊勢新聞

2018年1月7日(日)

▼鈴木英敬知事が年頭会見で、列車にはねられ死亡した衣斐賢譲元鈴鹿市長の通夜に出席すると表明した。葬儀出席は否定し、近くで公務があると前置きしての表明だったというので、このところ公務、政務を使い分ける知事のこと、この弔問は公務かどうか、ちょっと気になった

▼知事の交際費に見る弔問関係は香典と通夜見舞い、供花の3つだ。額はそれぞれ1万円、3千円余、8千~1万7千円。本人の死よりその父母が手厚くなるのは「政治家」ということだろう。供花では若松孝二映画監督に支出したが、映画を上映したからということか。公私の境界は分かり難い

▼同じ県会議員の片や母、片や父で十日違いなのにベテランは3点セット、一期生は香典だけに首をかしげた。前葉泰幸津市長の23年度死去した母の時は供花だけ、27年度の父が3点セット―親密度の変遷だろう

▼志摩市長の父も25年度の前任者は2点、サミットの年の現職は3点。政治スタンスが分かる気はする。知事が公式に哀悼の意を表した対象に「さまざまな評価」と評したのは言い得て妙だが、続く「いろんなアイデアを出される方」は意味不明

▼「船を出すとか」とも言ったそうだから、なお不明。地元の偉人大黒屋光太夫を描いた井上靖の小説『おろしや国酔夢譚』原作の同名の映画のロケ用の船を元市長が鈴鹿に飾ろうとした話がある。船は二束三文で実現寸前までいったが、えい航費が数1千万円のうえ時化にでもあったら海の藻くずなどで立ち消えになった

▼酔夢譚と現実とが織りなす白昼夢を見たわけでもあるまいが。