伊勢新聞

2017年12月27日(水)

▼視察先の昼食で市議が飲酒したという指摘を受けて、伊賀市の空森栄幸議長は「視察中と分かっていれば飲酒していないはず。昼食後の視察が正式なものだったのかも分からない」。議会事務局は「視察前の飲酒なら止めていたはず」

▼視察後の飲酒なら構わないということだろう。視察を控えての飲酒を禁止する規則や申し合わせはないというが、規則は定めなくても一般的な考え方はある。視察先での「公務」とはどこまでを指すかだ

▼公務員の場合、出張手当は出張自体に支給されるもので、24時間が対象といわれる。手当が支給されている以上、出張目的の日程が終わっても勤務中という考え方だ。芦浜原発を巡る攻防が激しかったころ、地元の旧南島町で県職員が反対派の町民に夜間、監禁されたことがある。飲酒していたことが、公務との兼ね合いで泣きどころとなり、県が表沙汰にしなかった一つの理由だった

▼県議会の視察でも、晩飯と宴会の境界はあいまい。カラ出張後の県庁改革、議会改革前は公費で酒が出るのは慣例だったが、二次会などの飲酒には自粛の指示が視察団長らから出ていた。議員野球では〝公務〟の自覚が薄れがちで、けんか騒ぎに発展したことがあるが、公務中の飲酒に厳しく目を光らせる古参議員と試合後にハメを外したい若手議員との意識の違いが背景にあった

▼伊賀市議会常任委員会の視察も公費が支出されているという。視察中の飲酒は「不謹慎」という高度な倫理観に背くこととは別に、視察という公務と公費のとらえ方の問題がある。感情論に終わらせてはなるまい。