<まる見えリポート>クロマグロの漁獲量制限、罰則規定を来年導入 三重県内漁業者に周知徹底へ

【クロマグロ親魚の資源量の推移(水産庁HPより)】

冬に旬を迎えるクロマグロ。スーパーには刺身用のパックが並び、すし屋でも人気を集める。そんなクロマグロが気軽に食べられなくなる可能性が出ている。3年前、国際自然保護連合(IUCN)に絶滅危惧種として指定されたためだ。水産庁がマグロの漁獲量制限を始めた後、三重」県内で違反が発覚して話題となった。来年からは罰則規定が導入され、県内でも対応が迫られている。

(水野志保)

クロマグロはいわゆる「本マグロ」で高級マグロの代表。日本近海や太平洋北部など世界中の温帯域に生息する。県内では鳥羽市以南の漁港で漁業者が定置網漁や養殖業を営む。中でも7―9月ごろに体長数十センチほどの幼魚を釣って養殖するやり方が主流だ。

漁獲量制限はクロマグロの親魚の漁獲量が2014年、ピーク時(1961年)の1割に当たる約1万7千トンまで落ち込んだのをきっかけに始まった。同年、IUCNは絶滅の恐れのある野生生物を指定するリストでクロマグロを絶滅危惧種にした。

日米や台湾など25の国と地域でつくる「中西部大平洋まぐろ類委員会」(WCPFC)は親魚を2024年までに4万1000トンまで回復させることを目標に設定。親魚を増やすため、30キロ未満の小型魚の漁獲量を02―04年平均から半減させることを決めた。

水産庁は2015年から30キロ未満の小型魚の年間漁獲量の上限を定めている。沖合漁業は16年1月―12月、沿岸漁業は16年7月―今年6月までを第二管理期間とし、日本全体で年間約4007トンを上限に設定。漁業種別で各都道府県の漁獲量を割り当てた。

第二管理期間中に三重県や長崎県で漁獲量の上限に達する事案が発生。同期間では県内の年間漁獲量の上限は23.4トンとされたが102.6トン上回る126.0トンに上った。さらに一部の漁業者が静岡県で水揚げした53.3トン分を報告していなかった。

県は第二管理期間の違反行為について「県内漁業者への周知・啓発不足で操業自粛が止まらず、他県に迷惑をかけてしまった」とする。今年7月以降、県内の漁業者に違反行為はなく、前期超過分の一部を差し引いた年間18.72トンの範囲で操業しているという。

その一方、10月には20道府県が共同で管理する定置網漁について、北海道や岩手県など他県が大幅に上限枠を超えた。上限の約580トンを上回ったため、漁獲量が範囲内だった三重県も連帯責任として操業停止要請を水産庁から受けた。

養殖業が中心の県内では、小型魚の漁獲量制限は出荷量の減少につながるが、出荷するマグロ類のうちクロマグロの占める割合が高くないため供給減対策は特に進んでいない。和歌山県では近畿大が完全養殖に成功。水産関係の大手商社も完全養殖に参入し始めた。

政府は来年からクロマグロ漁に罰則付き漁獲可能量(TAC)制度を適用する。県内では同年7月から漁獲上限枠を超えた漁業者に県が操業停止命令を出す。命令に違反した場合は3年以下の懲役または200万円以下の罰金。虚偽の報告した場合も罰金を課す。

県漁業環境課は来期の漁獲量の上限について「まだ公表されていないので分からないが、本年度と変わらないだろう」との見通しを示す。その上で「県内の漁協を通じて漁業者に県の管理計画や罰則規定についての周知を徹底していきたい」とした。

行政側は罰則規定などの強制力を持って漁業管理に乗り出すようだが、供給量の減少を求められる漁業者への対策も必要だ。