伊勢新聞

2017年12月18日(月)

▼NHKの籾井勝人会長(当時)の「政府が『右』と言っているのに…」発言が物議を醸していたころだ。名刺交換したNHKの解説委員に時候のあいさつのつもりで「なかなか大変ですね」と言ったら「○○の時間帯のニュースを見てください。そのころ上層部は見ていないんですよ」と真顔で答えられたのには恐縮した

▼「『時論公論』は見ていますか」と聞かれ「いや『視点論点』だけで」と答えてがっくりさせたのも恐縮だった。ニュース番組に疎く、時間帯がいつかは忘れてたが、NHKにも反骨の士はいますよと言っているのか、その時間帯以外は上層部の意のままだと言っているのか、どちらかなと頭をちらっとかすめたのは覚えている

▼NHK受信料制度の合憲判決は歓迎する。テレビがどう笑いを取るかを競う学芸会ばかりになっても退屈だからだが、天皇陛下の生前退位報道を巡り「なぜNHKのスクープだったのか。その後の報道が、NHKの内容から一歩も出ないのはなぜか」と言っていたのは、天皇の話し相手も務める評論家の保阪正康さんだ

▼「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」メンバー、御厨貴東大名誉教授も新聞で似たような感想を言って「その報道どおり、NHKでの天皇のお気持ち表明につながった」として経緯を明らかにする必要を指摘した。2人の疑問はNHKの果たした特別な役割を疑っているようでもある

▼受信料を払う国民の「知る権利」に応える以外の役割があるのか。安倍首相の趣旨とは別にしても「印象操作」されていないか、疑う必要はあるかも知れない。