伊勢新聞

2017年12月9日(土)

▼「もめたら止める」が人事の鉄則だが、人事だけに限らない。紛糾したら、原点に戻す。どんなに非難を浴びようが、耐えて突き進む。そこがぶれたらどんなに混乱するか、わたしたちは幾度も見てきたが、県議会選挙区調査特別委員会で再び目撃することになった

▼「委員長としての力量不足。早期にまとめることができれば良かったが、ここに至るまで議論の収束に至らなかったことを申し訳なく思う」と会議冒頭に三谷哲央委員長が陳謝した。その上で、県議定数を条例の45ではなく、正副委員長案の49でもなく、条例改正前の51に戻すことを提案した

▼「力量不足」を、本当に自認しているのかどうか。今度は副委員長との合意もないという。収束どころか燃えさかる炎にガソリンをまいているように見えなくもない。爆発させて委員会審議そのものを空中分解させ、条例定数実施に導く深謀遠慮というわけでもあるまい

▼ゲリマンダーは米州知事ゲリーがつくった自党に有利な区割りで、ギリシア神話の火中にすむというとかげ状の動物サラマンダーに似ていたことからそう呼ばれた。昭和48年、田中角栄首相が提案した公職選挙法改正案は、小選挙区制導入を先取りしていながら、自民党に有利な構図だったためカクマンダーだと批判され、断念させられた

▼正副委員長案は提案当初から「矛盾」を認めていた。新委員長案は、覆水を盆に返す行為と言える。批判続出の中で、三谷委員長と同じ会派の委員は前向きだったという。自派だけが支持する案が大方の評価を得られぬのは歴史が証明している。