伊勢新聞

2017年12月5日(火)

▼NHKの歌番組『SONGS』で、歌手のさだまさしさんが女性差別非難があった歌『関白宣言』について、最後まで聞けば非難は当たらないことが分かるなどと話していた。男性を立てながら実際は女性がコントロールしている。昔の女性は偉かったみたいな趣旨の発言も

▼歌が聞きたくて視聴していたのでトーク部分の記憶はあいまいだが、途中の歌詞の中で差別的な言葉を並べていたのなら、最後にいかに否定したからといって、すべて帳消しになるわけでもあるまい

▼平成元年参院選挙で県内候補の応援に入った農林水産相が、家は旦那を立て、奥さんは一歩退いてうまくいくなどと当時の社会党の土井たか子党首をあてこすり、女性差別発言として全国で批判を浴び〝土井ブーム〟を加速させた

▼話上手で農林水産相の応援演説は集まった主婦らの笑いに包まれ、大いに盛況だった。さださんの『SONGS』も、スタジオは女性たちの笑い声にあふれていた。女性を取り巻く社会環境は30年、変わりないのかもしれない

▼内閣府の「人権擁護に関する世論調査」で「職場での差別待遇」が最多だった。五年前の前回調査より、働く女性の環境は厳しくなっているという。「セクハラ」「ドメスティックバイオレンス」「男女の固定的な役割分担意識」が続き、いずれも前回を上回った

▼国際機関の「世界の男女格差ランキング」で、日本は三つ順位を落とし114位となった。こちらは政界での女性の少なさが大きいという。妻の言動の説明説明は夫が代弁すればよし、という環境である。急な改善は望めない。