伊勢新聞

2017年12月4日(月)

▼平成10年の流行語大賞は「ハマの大魔神」「凡人・軍人・変人」「だっちゅーの」だが、「やっぱりバイアグラでしょ」と言うのが立川志の輔さんの落語の枕だった。女性が口にできるようにした功績が大だが、問題は受賞者を誰にしたらいいか。受賞者不在では画竜点睛を欠き、主催者の出版本の売れ行きにも影響する

▼発明者を呼ぶというのも一策だが、知名度はあまりに低い、と志の輔さんの落語は展開していくのだが、今年の年間大賞に選ばれた「忖度」は順当として、受賞者が「忖度まんじゅう」なるものを企画販売した会社代表というのは、志の輔さんなら「ほら、それだよ」と思わず膝を打つか

▼バイアグラと違うのは、受章者候補がいくらでもいることだろう。トップは安倍昭恵首相夫人だが、晋三首相でも盛り上がること請け合い。佐川宣寿国税庁長官と昭恵夫人元秘書役の経産省職員の栄転コンビも沸こうが、「意味が分からない」と出席を拒否されるリスクを避けたか

▼もう少し早めに出ていたら、と残念に思うのは森友学園問題での財務省職員の「ストーリー」だ。予期せぬゴミが出たことにして「きっちりとやる必要があるというストーリーをイメージしている」と語った

▼厚労省局長だった村木厚子氏に無実の罪を着せようとして破たんした「検察のストーリー」は、その後捜査検事らが証拠改ざんで逮捕された事件や小沢事件などで広く流行したが、新語・流行語大賞にはノミネートされなかった。検察だけでなく、中央官僚の手口、思考を代表する言葉となった今回こそはどうだったろう。