伊勢新聞

2017年12月3日(日)

▼結果の重大さを考えると、刑事処分もやむなしではあるが、裁判長の言う「刑事施設の厳格な規律ある生活での改善更生が期待できる」が、本当かどうか

▼県内に衝撃を与えた鈴鹿の中2傷害致死事件の主犯格とされる少年の津地裁判決である。仲間4人を主導して2時間におよぶ過酷な暴行を加え、共犯者に口止めし、被害者をあざ笑う趣旨のメールを送った―などを、判決は「卑劣な犯行」と断じる。その通りには違いないが、成人ではなく、16歳の少年の犯行だと思うと、どこかに稚拙さも感じる。更生の余地は少なくない気がするが、日本の刑事施設が更生プログラムが優れているという評判を聞いたことがないのが心配である

▼「神」とされる横綱がリモコンなどの〝凶器〟で後輩を傷つける。そのけんまくに同席した2人の横綱もとめられなかった。わが身に降りかかる不安からだろう。暴力現場の事情は、力士も少年も変わらない。事件を受けて県がめざすいじめ防止条例で「子どもたち自身が傍観者にならないように」(鈴木英敬知事)する難しさがそこにある

▼判決後に会見した補充裁判員の女性が「白昼、街中での事件」だとして「周囲がもっと早く気付いて通報できなかったのか。電話の一本も」。現場の鈴鹿市郡山町の太陽の街は住民が高齢化して人口が減少。商店や公共交通機関は撤退し、かつて子どもたちや家族連れでにぎやかだった中央公園も、人の目の届かない死角となった

▼買い物難民など、市街地の空洞化が深刻だが、防犯面でも問題があることを中2傷害致死事件は突きつけている。