伊勢新聞

2017年11月28日(火)

▼万歳で最も違和感があったのは政府主催の主権回復の日式典で突然会場から声のあがった「天皇陛下万歳」ではなく、衆院解散の万歳でもない。平成7年知事選で、北川正恭氏の対抗馬だった尾崎彪夫元副知事の選挙事務所での選挙運動最終日の万歳だ

▼事務所に戻った候補者を拍手で迎え、運動員の労をねぎらい、明日の投票への最後の頑張りを要請して解散する寸前、後援会重鎮が「万歳をしよう」と言い出した。候補者が「いや」という形に口が動き、数人が顔をしかめたが、重鎮の「やろう」の声に押し切られた。意味の分からぬ万歳だった

▼万歳したことはある。運動会などで所属する白組なり赤組なりが総合で勝利した時だ。心の底から沸き起こる喜びの表れで、衆院解散時のような景気づけの万歳とは違うが、大相撲九州場所で優勝した横綱白鵬が会場に呼びかけた万歳三唱は何だったか

▼「やりすぎだな」と一蹴したのはNHKの解説をしていた元横綱北の富士勝昭氏だ。「彼らしいと思うけど」の前置きがある。白鵬が取り口について「後の先」とか言っていた時も、まともに取り合わなかった。相撲の歴史や日本の伝統をよく勉強するという白鵬だが、成果がどうしても口をつく性格なのかもしれない

▼九州場所では、立ち会いを巡り一分間アピールした。目指す大横綱双葉山は、相手に合わせ、どんなに不利な間合いでも立ったという。道半ばということだろう

▼優勝時や激励会など、万歳の場は何度も踏んでいる。喜びではなく景気づけでもないとしても、白鵬が見た日本の万歳であるには違いない。