伊勢新聞

2017年11月24日(金)

▼満ちれば欠けるは世のならい。組織も、どんなに完全に見えてもよどみは付きもの。不断の見直しが必要だ。県が来年度の部局組織の見直し案を議会に提示した。組織の活性化を促すに違いない

▼健康福祉部と、同部の医療対策局、子ども・家庭局の1部2局体制を廃止し、新たに医療保健部と子ども・福祉部の2部制にするという。部局組織名も時世時節。再編のたび部を移るのはかつては「生活」「環境」だった。福祉先進県を掲げたころは部長は3役候補だった「福祉部」だが、徐々に昇格ポストとなり、今や〝漂流部〟か

▼「医療保健」にしろ「子ども・福祉」にしろ、見方によっては重複語でくどい気がするが、鈴木英敬知事に言わせれば、心外な見方だろう。「保健」の中でも特に「医療施策」、福祉の中でも特に「子ども施策」を、鈴木県政の重点にしていくという意思表示だと言うかもしれない

▼既成の施策の継続を嫌い、何らかのアクセントをつけなければ関心を示さないといわれる知事らしくはある。医療保健部には、福祉部で扱ってきた介護関係を移すのはその証しか、それとも、介護人材確保を「人づくり革命」の柱にあげた安倍晋三首相への追随か

▼政権の重点施策を所管から外されて、福祉部のモチベーションはどうか。医療と福祉の間に長年、溝があったのは周知の通り。欧米に比べ日本の障害者数が少ないのは患者を対象外にしてきたからで、特に福祉関係者は医者に対して卑屈になる

▼「健康福祉部」になってその溝は縮小傾向だったが、再び分断された。元のもくあみにならないことを。