<まる見えリポート>「伊勢湾台風以上の被害」 台風21号で玉城町の浸水

【台風21号の浸水被害で出た玉城町内の災害廃棄物=同町田丸で(10月30日撮影)】

三重県内各地に被害をもたらした10月の台風21号は、これまで目立った水害を経験してこなかった玉城町でも猛威を振るい、多数の浸水被害が出た。町の概要調査で判明した床上浸水の家屋数は「伊勢湾台風の時以上」(●村修一町長)とされる282戸に上り、最も多かった伊勢市に次ぐ。今も自宅で暮らせる状況にない家庭もあり、10日現在、3世帯6人が避難所で過ごしている。

(倉持亮)

 浸水被害は町役場から半径約1キロの田丸、佐田、下田辺地区に集中。役場近くの外城田川が氾濫した。役場の周りの堀からも水があふれ出し、一気に道が冠水。浸水がひどかった地区では、家屋の壁などに泥水の痕跡が線上に残っており、高い所では地面から約1メートルの高さまで浸水したようだ。

同町田丸の北村礼子さん(68)は家の前の道に水があふれてきた際、車を役場に避難させた。5分ほどで役場に着き、すぐに歩いて自宅へ戻ろうとしたが、既に道路は冠水しており、腰の辺りまで水に漬かったという。「流されそうになり、動けなくなった。電柱などにしがみつきながら家まで帰ったが、水がこんなに怖いとは」と振り返る。

浸水被害がひどく、避難所生活を送る町民もいる。役場近くに住む男性(75)宅は玄関先で1メートル5センチ、床上で82センチ浸水。壁が剥れ落ち、床の張り替えが必要だ。たんすなどの家財道具、電化製品、衣類、寝具などがほぼ全て水に漬かって駄目になり、妻(78)と2人で同町勝田の町保健福祉会館に避難している。

男性によると、22日深夜から23日未明にかけ、「玄関の郵便受けから水があっという間に流れ込んできた」。男性宅は平屋建てで高い場所への逃げ場がなく、玄関も水圧で開かない。男性は消防に救助を求めたが、自宅周辺が水没していたため、消防も近づけなかったという。押し入れの上段に妻と一緒に「避難」し、水が引くのを待った。

男性は「頭の中が真っ白で何も考えられなかった」と語る。町は保健福祉会館の避難所開設を15日ごろまでと考えており、男性は自宅の修復を急がねばならないが、めどは立っていないという。「あちこちで被害があり、大工さんも忙しい。どうしようもない」。

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町は3日から県などの協力を受け、家屋の被害認定の調査を続けている。17日ごろまで実施し、公的支援などを受ける際に必要な罹災(りさい)証明書の発行は月末の開始を予定している。同町には災害救助法と被災者生活再建支援法の適用が決まっており、罹災証明書は支援金などを申請する際に必要だ。床上浸水以上の家庭を対象とした1世帯当り5万円の災害見舞金も月末からの支給を目指している。

中村元紀総務課長は「何もかも初めてのことで戸惑っている。町民からは『避難勧告を出すのが遅い』という声も頂いた。災害時の対応を考え直したい」と話した。

※注:●は点が一つの「辻」