伊勢新聞

2017年11月7日(火)

▼神奈川県座間市での遺体切断事件で、女子高生の可能性がさらに一人浮上した。九人の遺体の中で恋人を探して被害にあった男性一人を除き、誘い出された八人のうちの三人が女子高生ということになる

▼誘い出す手段はソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)。ツイッターで自殺志願者を広く求め、連絡がつくと双方向通信に切り替え、助言や偽りの体験を語りかけた。具体的にどんな会話か。誘いの言葉が「良かったら、ご一緒しませんか」だったという報道があった

▼いかにもソフトで紳士的。優しささえ感じさせるが、面と向かって女性にこんな言葉を使える男性はあまり多くはないのではないか。イタリアの男性は息をするように甘い言葉をささやくという。免疫のない日本の女性はのぼせ上がるというが、幼少期に大切に育てられた少子化の時代はその傾向が弱まることはないのではないか

▼日本人でも文字ならハードルは低い。手紙でもそうだが、手軽で即座に交信できるメールは極めて短時間に盛り上がってしまうといわれる

▼自殺願望女子高生といえば、伊勢市での事件を思い出す。彼らが日常的に使用していた無料通信アプリ「LINE」がどの程度関与したか知らないが、殺害を依頼された男子生徒は優しい性格だったという。別の男子生徒に依頼して逆に説得されて断念したとも言われる。このころの不安定な精神とSNSの危険度をあらためて思い知らされる

▼SNS時代のコミュニケーション能力は、中傷や誤解を招く表現を避けるというだけではなく、読み解く能力も求められる。