伊勢新聞

2017年10月28日(土)

▼いじめ件数が過去最多という文科省の平成28年度調査で、県は千人当たりでは下から数えて12、13番目といったところか。県が同年度調査で解消率が重要で約8割で胸を張ったが、文科省も「早めに把握し対応できているなら望ましい」と追認した形なのはめでたい。件数で前年度比倍増し「積極的な認知に努めた結果」で合わせ重要としていたが、全国的少数県になって、こちらは何と言うか

▼全体6割以上を占める「冷やかしや悪口」は体験上一筋縄ではいかない。中学校であだ名で呼び、親密度の表れと思っていた友人2人が高校入学後、あだ名で呼ぶ友達を次々殴っていた。1人は不良仲間に入ったが、その行為と無縁とは思えない

▼人ごとではない。田舎町の小学校から競争の激しい市の中学校へ移って勉強したいと親に懸命にせがんだが、本音は小学校でのあだ名から逃げたかったからだ。恥辱と親が悲しむだろうと、本音の方は口にできなかった。娘が小学校でしばしば髪を切られ、教師はいじめを疑ったが、娘は脅してもすかしても「遊んでた」としか言わなかった

▼いつぞや県立高校の教師が20代後半の若者に乱暴される事件があった。釈放後、報道機関や人権相談窓口で、かつてその教師からひどいいじめを受けていたことを訴えた。精神的に不安定で、相談先でもごたごたを起こしたが生来か、その教師のせいか、考えさせられた

▼小中高校生とも親や教師には知られぬ世界があった。まして数字しか知らない県教委が「重要なのは解消率」などという言葉には空疎以外の何ものも感じない。