伊勢新聞

2017年10月22日(日)

▼「同じことを言っても、私が言っても通らぬが、竹下さんが(登元首相)言うと通っていく」と言ったのは宮澤喜一元首相である。大量の造反者を出して内閣不信任案がまさかの可決で退陣した

▼竹下元首相の方は、リクルート事件への関与疑惑で退陣。秘書が自殺している。政権誕生を巡っても、反社会的勢力の暗躍が取りざたされた。55年体制下の自民党政権は〝振り子の論理〟が続いたが、国民不信を招いた内閣の後を継いだ政権は党内総ぐるみの〝○○下ろし〟で退陣するのがほぼお決まりだった

▼宮澤元首相が率いた派閥、宏池会の創設は池田勇人。蔵相時代に「貧乏人は麦を食え」と言い、通産相時代は「中小企業の五人や十人自殺してもやむを得ない」と言って大臣を棒に振った。不人気だった安倍晋三首相の祖父、岸伸介首相の後を受けて政権を手中にすると政治姿勢を一転、所得倍増政策を打ち出し「寛容と忍耐」を政治理念に「私はウソを申しません」と、失言のイメージを逆手にとった

▼安倍首相が岸から池田政権への権力移行を、自身の政治思想の実現と人気のバランスのお手本にしていることは想像に難くない。解散の旗印にした「国難」も、冷戦構造の香りが漂う

▼小池百合子・希望の党代表の「リセット」も〝ゲームの達人〟にふさわしい。が「排除」で政権奪取への本気度に疑問が生じた。岡田克也氏の「少し違う」の無所属宣言も枝野幸男・立憲民主党代表の「まっとうな政治を取り戻す」も

▼結局は「一強政治」にどこまで一矢報いるかか。今日は投票日。直撃するのは神風か微風か。