伊勢新聞

2017年10月21日(土)

▼横領容疑の元鈴鹿市立小学校長を地検は起訴猶予処分とした。処分保留で釈放したのが昨年7月。処分保留は、その名の通り処分そのものではないとはいうものの、新たな事実が発覚しない限り、起訴猶予と重なる。1年数カ月を経てわざわざ事件を蒸し返したことになる

▼「被害弁償済みであることなどを考慮した」と次席検事。被害金額は合計約71万円。当時大半が返還済みだったという話もあり、思い出したような処分決定は「など」に意味があるということか

▼県教委が、退職後に約91万円の横領と窃盗が発覚したとして、退職金の返納命令を出したのは先月4日。「個人情報に関わる」と、教育委員会の審議の中身も、返納させる退職金の金額も明らかにしなかった。退職公務員へ返還命令を出せる根拠条例とどう連動しているか、県民が検証できないのは、行政の透明性確保のために市民が参加する教育委員会の本旨に照らし遺憾である

▼国の森友・加計問題同様、県教委もこのところ〝臭い物にフタ〟の体質が目立つ。越県入学問題では関わった教職員の処分は不問にしたし、伊賀市から虐待を指摘された福祉施設への高校生の研修を継続させた。教師の過剰労働の背景に「聖職論」があるというが、県教委はとうに脱している

▼校長の退職金の平均2千万円。返還命令は法改正などでできるとして、起訴されない段階で、元校長は、恐れ入りましたと返還に応じたのかどうか。その決着をみての津地検次席検事の「など」であるとすれば、閉鎖体質の機関同士の決着の付け方として分からなくはない。