伊勢新聞

2017年10月17日(火)

▼本紙企画『衆院選・攻防の裏側①』の「〝豹変〟希望合流に『好機』」は「今はわれわれが唯一の注目を集めている。面白い選挙になる」という芝博一・民進党三重県連代表の言葉を伝え「期待したのは希望そのものではなく、民進に対する『世間からの注目』だったか」で終わる。その後の推移に「政局の芝」何を考えるか

▼いったん決別を決意したはずの野党共闘へ、時計の針を逆にたどったか。「希望合流」に政権交代の受け皿を期待した一人として、同病相哀れむ親近感を抱く

▼政治に大義名分は必要だが、大義で政治が進むわけでもない。「理屈は後から貨車でくる」と言ったのは旧民社党委員長の春日一幸だ。何とでも理屈はつく。どっさり、ということだろう

▼消費税導入が決まったのは竹下政権の平成元年。竹下登首相と盟友関係にあった安倍晋太郎に若手議員だった北川正恭元知事らは口々に反対したそうだ。二年前に売上税を提唱した中曽根内閣は統一地方選で惨敗している。うん、うんと聞いていた晋太郎は議論が尽きたとみるや「よし、賛成でいくぞ」と言って席を立った

▼「僕が言ってもだめだが、竹下君が言うと通っていく」と言ったのは宮沢喜一元首相。政治が理でなく、情で動いた例は枚挙にいとまない。「サルは木から落ちてもサルだが、議員は落ちたらただの人」と元自民党副総裁の大野伴睦の警句。古つわものの言葉には理屈を超えた重みと、理とは別の真実がある

▼希望にも立憲民主党にも行かず、筋を通した県内無所属候補らの苦戦の報に「政局の芝」の思いを考えてみたくなる。