伊勢新聞

2017年10月7日(土)

▼これを隠ぺい〝体質〟と呼ばないのであれば、何と言えばよいのだろう。昨年度に県内の児童相談所に寄せられた虐待相談の中で、児童養護施設職員による小学生女児への性的虐待があったと四日の県議会で報告された

▼虐待相談が1310件で過去最多だったと公表されたのは6月10日。家庭、地域の養育力の低下など、相談件数が高水準の背景を説明するだけで、性的虐待事件などの記述はない。千葉県松戸市で小学校三年生の女児が殺害され、女児の通学路で見守り活動をしていた小学校の保護者会会長が逮捕されたのは、その2カ月前の4月14日。最も信頼されていた男が襲った事件として社会に衝撃を与えた

▼女児にとって最も安全な場所である児童養護施設で職員から性的虐待を受ける深刻な事態がなぜ起きたのか、説明もない。再発防止と称して、施設内の死角を点検し、職員研修を実施したと、議会で報告するだけである

▼数字への関心だけで、一件一件の中身には思いが至らないのかもしれない。児童相談所職員は表面的観察をするだけで危険に対する想像力に欠け、性的被害などは見つけにくいと、平成24年の四日市市児童虐待死を検証した委員会。緊張感のなさは随所で指摘された。単に改善されていないだけかもしれない

▼8月には姉を児童相談所に保護しながら、妹を母の内縁の夫に虐待死されてしまった事件も、その表れだったのかもしれない。来年発表される本年度の虐待相談件数で、これも千数百件の数字の中に含まれるのだろう。ペルー国籍だから、一件の数字としても入らないか。