伊勢新聞

2017年10月6日(金)

▼めまぐるしく変わる衆院選情勢に、鈴木英敬知事の「路線確認解散」は論外としても、安倍晋三首相命名の「国難突破解散」もとんと聞かなくなったが、奇襲解散だったことには違いない。県議会が選挙費用10億円という巨額を議論もなく可決したのもやむを得ない

▼選挙公営費や広報啓発費に充てるというが、広報啓発もポスターや街宣などの選挙運営の一環で、投票率を上げる工夫などに回らないのもまた、仕方あるまい

▼先のぶら下がり会見で、鈴木知事が「前回の参院選では18歳より19歳のほうが(投票率が)低かった。啓発を継続する必要がある」。さて、これは具体的に手が打てるのか。ちょっと遅すぎる気がする

▼「細かい数字忘れたが、19歳が18歳と比べて少なかった。高校生部分は主権者教育が進んでいるが、それ以外の19歳をどうアプローチしていくか大きな課題」と言ったのは、昨年参院選直後だった。一年後同じ言葉を繰り返すのも無策だが、いや学力向上に忙しくてということかもしれない

▼昨年高校生部分の「主権者教育が進んでいる」のが本当なら、今年は19歳。そう心配することもなかろうが、高校生部分の「啓発継続」が心もとない。「新学期に(主権者教育の)冊子は配られたけど」とある県立高校三年生。「授業などで教わったことはない」

▼これからの日程だったか。こんなに急転直下とは、と県教委も学校もハトが豆鉄砲を食らった心境かもしれない。おかげで頭が真っ白いまま、高校生は大義なき解散、党利党略、離合集散の際立つ選挙の洗礼を受けることになる。