▼四日市市の80代女性が孫を名乗る男からの電話で、今年最多の600万円をだまし取られた翌日、同市70代女性の「だまされた振り」で、受け子を逮捕した。警察と詐欺グループの攻防は激しい
▼なぜだまされるのか不思議に思うのは直面しない時で、うそに決まっていると確信している架空請求詐欺でも、いざハガキが舞い込むと心は乱される。テレビで実際の録音を聞くと、その時代のはやりを取り込み、人間心理を巧みについた話術に舌を巻く
▼埼玉県春日部市の80代女性は6日、オレオレ詐欺と見破ったが、続いてかかってきた警察官を名乗る男からの「犯人を捕まえるのでお金を渡して」という要請の電話で、受け取りにきた男に100万円を渡してしまった。3月の名古屋市のケースは、先に警察官という男から振り込め詐欺の注意と「何かあったら電話を」の電話があり、その後のニセ電話に連絡して、逮捕に協力しているつもり400万円をだまし取られた
▼警察が効果的と力を入れる「だまされた振り作戦」が見事に逆手に取られた。この作戦で警察が現金を要求することはないと注意を呼びかけたが、後の祭りである。点数第一、協力者二の次の体質が、ここでも垣間見る思いはする
▼一流経営者らがだまされたいわゆるM資金融資話に知人が本物と信じ込んでのめり込んでいたので、ツテを頼んで取材経験豊富な共同通信社会部記者に詐欺を見抜くコツを聞いたことがある。「ない。即刻その話から離れろ」が答えだった。国民、市民をおとり捜査まがいの協力者にする作戦は、早期にやめるべきだろう。