伊勢新聞

2017年9月14日(木)

▼東芝がまた半導体メモリー子会社の売却先決定を見送った。米ウエスタンデジタル(WD)陣営との交渉を見直し、「日米韓連合」に戻して来週契約を目指すという

▼売却手続きを来年3月末までに終えなければ上場廃止になる。避けるためには、8月末までに売却先を決めなければ、各国の独占禁止法審査をクリアする手続きが間に合わないと言われていた。それが9月に入り、13日がぎりぎりと言われ、今度は20日という。独禁法手続き、WDとの訴訟の行方は―。政府肝いりの大企業にウルトラCがあるのかどうかはともかく、会社の存続を人質に、東芝経営陣が危険なチキンゲームを繰り広げているように見えてならない

▼公式非公式に伝えられる方針が次々に覆される。決定権がどこに、誰にあるのか、ないのか。予想外に高値で売却できたことで優良子会社社長から本社社長に転じた綱川智社長の統率力のなさが目につくばかりだ。そんな時期に岩手県北上市への半導体メモリー子会社新拠点を建設すること発表することにどんな狙いがあるのか。ちぐはぐさは否めない

▼鈴木英敬三重県知事は「新拠点建設による四日市工場の雇用やサプライヤー(取引先)への影響はないと伺っている」。森智広四日市市長も「四日市工場の、マザー工場としての位置づけや投資計画には一切変更がない旨の報告を受けている」。どこが主導権を握るのかさえ流動的な中で、これだけは覆らないという確信はあるのかどうか。だから「伺っている」「報告を受けている」としか言ってないじゃないかということかもしれぬ。