▼風化を防ぐ意味でもあるのだろうか。県教委が約91万円を横領、窃取した元校長に退職金全額返納を命じた。昨年6月に業務上横領罪で逮捕。同7月処分保留で釈放されてから一年二カ月もたつ
▼「県民の信頼を著しく損なった」という県教委の処分理由は年月でほとぼりがどうのというものではないが、いったん一件落着したかに思わせて、忘れたころに人生設計を根こそぎ破壊するかのような鉄ついを下す。刑の持つ最大のダメージ効果を心得た〝無情な処分〟ではある
▼逮捕時の容疑は体育館維持管理費38万円とPTAからの学校協力費39万円の計77万円。通帳紛失の連絡で市教委が調査した結果、校長室の金庫から見つかり、収支は合っていたが数回引き出されていた。元校長は始末書を提出して退職。市教委は警察に相談し、逮捕の運びとなった
▼今回新たに親睦会担当者の事務机内から教職員による親睦会のお茶会計集金から20万円盗んだ窃盗が加わっているが、現役の時にこちらも発覚していれば、免職処分は避けられなかったに違いない。始末書と「私的流用はない」の釈明に依願退職を認めて退職金を支払う一方で刑事罰を相談し、釈放から八カ月後のこの3月教育委員会に返納処分を提案するまで、法・条例に従うかどうか判断に迷う期間でもあったということか
▼その3月に提案が承認されてからさらに六カ月は、何をしていたのだろう。「県教委は県と違い、処分するにしても相談するところが多いから」―県人事委OBの言葉は皮肉っぽい。〝温情処分〟でもあるということか。