▼伊賀市から虐待を認定された同市の特別養護老人ホームに対し、県社会福祉協議会は即座に教員免許取得のための介護体験を中止した。問題施設での体験が学生の今後に何をもたらすかを第一に考えたからだろう
▼県教委の廣田恵子教育長は同施設での県立伊賀白鳳高の実習を予定通り実施。「中止すれば本年度分の単位に支障をきたしてしまう」。制度を規定通りに運用することを優先するということだろう
▼いじめに適切な対応をしなかったとする県立高三女子生徒からの訴訟に対しても、廣田教育長の反応は被害生徒より組織防衛が優先されていると感じるのはそんな〝色眼鏡〟で見るせいか。「学校と連携しながら進めたい」というのが、まず被害者に寄り添うとするいじめ防止対策推進法の趣旨から外れている
▼事実関係は「訴訟に差し障るので控えたい」というのも役人の決まり文句。裁判の勝ち負けが何より大事という前提が言わせるのだろう。どんな思いで生徒が訴訟にまで踏み切ったかなど二の次に違いない
▼「事実関係を一つ一つ確認している」とは何を指すか。学校が設置した調査委員会の調査だとすると、法に基づく第三者委かどうか。学校は「いじめ重大事態」と認定した翌月調査委を発足したが、学校長はこの十日の会見でも、いじめの認識があいまい。廣田教育長も訴状を「全面的には受け入れていない」。第三者委は、重大事態だと当局側が認識することが前提だからである
▼取手市の第三者委はそこに疑義があり文科省から解散を求められた。根底に被害者側の学校、第三者委不信がある。