伊勢新聞

2017年8月15日(火)

▼県立一志病院の民間移譲方針を撤回して鈴木英敬知事が6月5日の県議会で「運営形態について、県と市の役割分担も踏まえて方針を出したい」と表明した翌六日、津市の前葉泰幸市長が記者会見で「『病院の経営を一緒にやろうよ』とすれば、それは難しい」と一蹴した

▼一志病院の今後を探る『まる見えリポート』によると、会見では「われわれの責任である福祉分野にもっと関与していくという提案は、これからもしていける」とも言ったらしい。訪問看護や介護予防の強化には「事業費を出す」が「ただ単に経営参加と言われると筋が違う」。「共同経営では、もともとない」とも

▼三重大学に寄附講座「津地域医療学講座」を設けて一志病院の診療体制向上につなげてきた経緯など「もともとなかった」かのよう。27年度の「県立一志病院のあり方に関する検討会」には津市から健康医療担当理事が参加していた

▼津市の委員とおぼしき発言が記録として残る。「津市は基礎的自治体としての立ち位置を理解した上で、地域医療にしっかりと取り組んでいきたい」

▼特に美杉地域対策として「一志病院から今まで以上に人的資源・医療資源をお借りしたい」「診療方針や経営方針を尊重しながら、津市として支援させていただく」「地域住民の方々にはご安心いただければ」

▼県で市民病院を持たない数少ない津市としては当然の発言ではあろう。鈴木知事もキツネにつままれた気がしているのではないか。経済産業省出身の青年知事が老練な旧内務省の総務省出身市長に手玉に取られている感じがしなくもない。