伊勢新聞

<修好130周年・交流する日タイ(中)>タイで日本食ブーム 三重県産品輸出の重要な市場

【タイの日本料理店で提供されるすし=バンコク市内で】

タイと日本の間では、約600年前から人と物が行き来している。グローバル化を迎えた現代は、交流がさらに進む。タイでは日本旅行が人気で、日本人にとってもタイは気軽に行ける海外渡航先の一つだ。日本でパクチーなどのタイフードが流行する中、タイでも日本食ブームが到来している。三重県内でもタイ人観光客が増加。タイは県産品の輸出先として重要な市場になっている。

タイ外務省によると、2016年にタイを訪れた外国人観光客は約3258万人で、そのうち日本人は140万人ほど。例年とほぼ同じだった。ビザの緩和により、タイにとって日本は旅行しやすい国となり、タイからは年間約90万人が日本を訪れている。

タイ外務省東アジア局のシントン・ラーピセートパン局長は「タイ人は日本に親近感があり、日本人に好印象を持っている」と説明。「台湾もビザなしで渡航できるようになったが、それでもいまだに日本のほうが渡航先に多く選ばれている」と語った。

訪日タイ人は県内にも観光に訪れている。県によると、昨年のタイ人の延べ宿泊者数は約9千人。前年の平成27年が約7千人、26年が約5千人で、年々2千人ずつ増加した。県も東南アジア諸国の中でタイを重点地域に位置づけ、観光PRに取り組んでいる。

県は、旅行会社に三重を売り込むため、商談会に職員を派遣してきた。団体観光客の取り込みを狙うとともに、個人旅行者へのPRも始めた。今年6月には、写真共有アプリ「インスタグラム」を開設。英語や中国語のほかタイ語でも観光地を紹介している。

また、県は昨年2月、タイのパタヤ市の東海岸ゴルフコース協会と「ゴルフツーリズムの地域間連携の促進に係る覚書」(MOU)を締結し、ゴルフ場を活用した観光誘客で協力することを約束。タイと県内のゴルフ場関係者が年に1回ほど互いの地域を訪れ、ゴルフツアーを開いている。今年5月には津市のゴルフコンペに招いた。

観光誘客以外に、輸出品でも売り込み合戦が始まっている。タイは、日本にマンゴーやドリアン、ライチなど九種類の果物を輸出。現在は、酸味としゃきしゃきした食感が特徴の青マンゴーを新たな輸出品に採用されるように働き掛けている。

三重も農林水産物の輸出を進めている。平成23年から三重南紀農協がミカンの輸出を本格的に開始。全国で、タイにミカンを輸出しているのは、静岡と三重の二県のみで、年間輸出実績は静岡が1―2トンなのに対し三重は10―20数トンと圧倒的に多い。

県によると、タイはミカンを海外から輸入する場合、病害虫のいない農園を指定しており、日本から輸出する前には日タイ両国の植物防疫官が害虫が付いていないことを確認する。事前の農園指定や検査が厳しいため、全国でもミカンのタイ輸出は参入が難しい分野という。

また、タイでの日本食ブームを背景に、県内の水産加工業者が高級スーパーや日本食レストラン向けに冷凍水産加工品を輸出。県内から輸出されたブリの切り身や、さつま揚げなどの練り製品が現地のレストランやチェーン店で使われている。