▼国内製造業で過去最大の赤字をだし、大幅遅れて関東財務局に提出した有価証券報告書は、監査法人の「限定付き適正意見」付きだった。にもかかわらず「決算は正常化した」とどうして言えるのか。東芝の社長の神経は分からない
▼米原発事業を巡る損失の認識時期で、東芝と監査法人との溝が埋まらなかった。「米原発事業」とは共同企業体で受注していた米電力、ガス会社の原発四基だが、福島原発事故などで米国の審査基準が厳格になり、負担割合を巡って共同企業体内で訴訟に発展した
▼三年の裁判の末、東芝の米子会社ウエスチングハウス(WH)は平成27年10月、係争相手をゼロ円で買収し、裁判に終止符を打った。巨額損失はこの買収相手の評価の中で発生した。翌年3月決算に計上すべきというのが監査法人の主張で、巨額赤字の存在が分かったのは同12月だから、29年3月決上が当然というのが東芝の言い分だ
▼監査法人の主張通りだと、その後の28年6月、9月決算は虚偽記載になり、今年3月決算は大幅黒字になる。WHは米国で破産申請しており、それを見過ごしたとなれば監査の適不適を巡り集団訴訟の標的にされかねない
▼東芝が監査法人の主張を認めれば経営能力どころか、損を承知で買収したことになり、背任に問われかねない。両者一歩も引けぬところだが、現実はともかく、筋は監査法人にあると言えるだろう。WHの破産申請の理解を求めて経産相が米国に飛び、東芝メモリの売却先は経産省主導で決まった
▼四日市工場の今後に東芝が当事者能力があるのかどうか。