伊勢新聞

2017年8月12日(土)

一朝事ある時の三重県教委の釈明はこのところ耳を疑う。インターネット交流サイト(SNS)でいじめられているのに学校側が適切に対処しなかったと県立高校3年の女子生徒に訴えられて、県教委の子ども安全対策監はサイトの運営者に投稿削除を依頼しなかったことについて「誰が誰のことを投稿したのかということが特定できず、どうしようもなかった」

▼ツイッターにしろLINE、フェイスブックにしろ、削除要請は機能に組み込まれて、一時より随分手軽になった。人権団体や中学校グループのネットパトロール班は見つけ次第削除要請しているが、対策監は何を言おうとしているのか

▼「いじめに当たるかは(学校が設置した)調査委が調べている」というのもピンぼけの気がする。「対象児童等が心身の苦痛を感じているもの」というのが、いじめ防止対策推進法上の「いじめ」の定義だ。まず加害行為をやめさせるのが法の趣旨だが、校長は当初いじめと判断せず、次いで「互いの言い分を聞きながら指導した」。法の理解が不足していないか

▼「いじめや暴力」を議題にした昨年10月の知事主催の総合教育会議。平成27年度のいじめ、暴力状況について、県教委次長は積極認知の結果、件数が増えたが、重要な解消率は全国を相当程度上回ると自画自賛した

▼その1カ月前、認知件数にも入っていなかった事案が一転「重大事態」になったことなどおくびにも出さない。会議は「教育の見識を広める重要な発信の場」というのが森脇健夫教育委員長の見解だが、上っ面だけなぞる張り子の虎に見えてくる。