伊勢新聞

2017年8月11日(金)

▼東京都内の総合病院産婦人科に勤務し一昨年自殺した30代の男性後期研修医が労災認定された。昨年自殺して今年6月、労災認定された新潟市民病院の女性後期研修医に継ぐが、医師の労災認定はそう珍しくはなく、平成27年度までの五年間で23人。うち過労死は六人で、過労自殺は未遂も含めて3人にものぼる

▼後期研修医は、医師免許を取得して初期研修を受けてから2年後、総合病院などでより専門的な技術や知識を学ぶ医師。さまざまな新しい症例に向き合うことで医師としての成長を実感できる時期である半面、多忙を極める

▼県立総合医療センターで3年目の後期研修医が三重医師会広報誌に日常を報告していた。マンツーマンの指導や県外研修、異動予定など、充実の日々が書かれているが、わずかだがこんな記述もある。「正直、仕事に追われ、食事もとれないくらい目まぐるしい日々が多いのですが」

▼「手技も含めて、本当にたくさんのことを経験することができ、自分の糧となっていると思います」と続く。食事がとれないくらい仕事に追われることもすべて自分のためなのだと吸収する使命感を見るようで我が意を得たりではあるが、危険と背中合わせという気がしなくもない

▼大変だなあと、県幹部との懇親会で松田克己医療対策局長に言ったら「医師はなあ」と言われただけで終わった。別に県立一志病院が研修病院として県内の医師不足にいかに役に立っているかを強調した。遠回りではあるが、医師の確保以外、医師の過剰労働を解決する道はないと言いたかったのかもしれない。