伊勢新聞

2017年8月9日(水)

▼いじめ防止対策推進法成立のきっかけとなった中二いじめ自殺事件の大津市で無料通信アプリ「LINE」を使ったいじめ相談を秋から試験施行するという。発表したのは越直美市長とLINE会社社長。事件後、市教委批判を強め、市長部局に「いじめ対策推進室」を新設して被害児童への相談業務を充実させてきた市長の施策の一環かもしれない

▼いじめ問題への教育委員会の対応には被害者側の不信が強い。原因は問題の解明より学校運営の正常化を目指しているように見られるためで、全校に専門教師を配置するなど、市も市教委も懸命に再発防止に取り組む大津市もこの3月、市立中でいじめ事案が発覚した

▼地元紙記者のリポートによると、悪口やにらまれるなどの被害を中一から受け、視力を失う発作を起こしたが、学校はクラス替えや教員監視などの対策だけで加害生徒と正面から向き合わず、中三には「学校へくんな」の手紙が自宅に届くようになった。弁護士から警告の文書を送付して止まり、学校不信を抱えたまま卒業したという

▼なぜ学校は加害行為をとめなかったか。「苦痛を感じればすべていじめだ、という定義通りだとクラス中が加害者だらけになる。加害者と被害者が次の瞬間逆転する可能性もあり、軽々といじめという表現は使えない」と校長

▼県でも、被害、加害経験が小中ともに六割以上で、どちらもありが五割以上。特定の児童生徒に偏る傾向の暴力行為とは一線を画すが、県は鈴鹿の暴行死事件を契機とし両者一体のいじめ防止条例をめざす。教委の思想が、色濃く反映している。