伊勢新聞

2017年8月2日(水)

「社会保障の仕組みが複雑なのはなせか」と駆け出しのころ、先輩記者に問われたそうだ。答えは「国民の目をごまかせるよう、わざと難しくしている」。共同通信の社内報にあった話

▼連想しての拙い小話を一つ。「社会保障の仕組みが複雑なのは―」の問いは同じだが、答えは「天下り先を確保するため」。複雑な上に制度がすぐ変わるので、業務に精通した役所のOBでもなければなかなか対応できないが、そのOBを複数受け入れていた社会福祉法人がいつぞや不適正会計で県の指導を受けていた。それほど複雑ということだが、申請時にはすんなり受け付けられたということでもあろう

▼「補助金申請の時期は、膨大な書類作成で毎年、数カ月忙殺される」というのは、小規模な私立幼稚園の園長。OB受け入れの余裕などないから自力で書類を作るが二、三度必ず突っ返される。ちょっとした違いでも、持ち帰ってやり直し。一度に全部指摘されないのもミソだ

▼学校法人「森友学園」は、同一建設工事費の契約書を三種類作って国や府などに提出し、補助金を詐取したという。補助金行政によほど精通していなければできないことだし、精緻な書類作成を大ざっぱに見える園長がしてのけられるだろうか。一方で、内部監査機構などを抱えた国や府がまんまとだまされるとも、とても思えない

▼法の裏を縫うようなこんな複雑な詐欺など、行政の知恵をなくしてできるのかどうか。記憶にない、記録にないだけでなく、当時の担当者は人事でそっくり変わっているのが、こんな場合の行政の常とう手段でもある。