伊勢新聞

2017年7月30日(日)

▼岐阜県瑞穂市の東濃地科学センター「瑞浪超深地層研究所」を見学し、地下500メートルの坑道まで降りたことがある。降りてしまえば体感に変わりがあるわけでなく、地上の災害とは無縁で、核の廃棄物の最終処分場としては極めて安定しているという説明を受けたが、経済産業省が地質学的条件から適否を推定したという「科学的特性マップ」で適地から外れていた

▼地下ではまだら模様の地層について説明を受け、何万年も安定している証拠とされたが、地元紙によると、フィンランドなどで進む地下処分場の壁面は鏡のようで、地層や化石などはないそうだ。地層があること自体、変化し続けてきた日本列島の歴史を物語るが、適地を否定するような説明はないのが、原発計画から廃棄物の地層処分を目指した原子力発電環境整備機構(NUMO)へと続く日本の原子力行政の伝統的方針であることを、改めて思い知る

▼県の海岸線が四色で示された適否の色分けのうち、最も「好ましい」とされる緑色にすっぽり覆われたが、その理由が「輸送面でも好ましい」という「科学的特性」とはおよそ無縁なことも理解に苦しむ。何より優先すべき安全・安心の「科学的根拠」が二の次になりかねない

▼原発行政に共通するのは国民の懸念に真正面から向き合おうとしない姿勢だ。米軍基地の辺野古移設問題の取り組みとは大違い。実現のシナリオより反発を回避する方策に傾倒していく。今回は「科学」を表看板にし、実質は地域振興策に食いついてくる自治体を待つ〝伝統の施策〟に何の変わりもないように見えなくはない。