伊勢新聞

2017年7月27日(木)

▼「失敗学」が注目されたのはいつだったか。ことわざにある「失敗は成功のもと」を学問仕立てにし、無数の失敗事例を未然防止に生かす

▼県立高校で規則違反の大量の越境入学者が発覚したことに伴い、今後の制度のあり方を考えるため県教委が設けた有識者などによる検討会はまさに失敗学を反映させている。委員の一人、ベネッセコーポレーションがかつて日本を揺るがす2千万件の顧客情報流出事件を発生させた

▼子会社の実質指揮命令下にある派遣会社社員が情報を持ち出していた。法廷では危機管理のほか労務管理上など企業側の問題も指摘された。失敗体験を県教育の失態回復に生かしてもらいたい

▼委員の一人、マスヤもまた、県を揺るがした赤福餅の原材料表示偽装事件に絡み、原材料として赤福から仕入れていた「むきあん」が適切かどうかの確認に問題があったとして説明に追い込まれている

▼浜田吉司社長は採用する立場から「県内外から生徒を集めることに賛成」。ベネッセは「全県一区にする手法もあるが、人気地区に一極集中するだろう」。失敗の経験を成功のもとにする意見はこれからということだろう

▼失敗学によると、失敗の種類は▽ある程度承知の織り込み済みの失敗▽果敢なトライアルの結果の失敗▽ヒューマンエラーでの失敗―の三つ。前二者は「成功のもと」になる失敗で的確な判断で対処でき、後一者が、さらなる悪循環が生まれる失敗という

▼越境入学問題は、前二者に属するから大いに期待できるが、県教委の対処が後一者で悪循環を繰り返しているようにも見えて心配。