伊勢新聞

2017年7月23日(日)

「犬が人をかんでもニュースにならない」はニュース価値判断の古典的基準で「人が犬をかんだらニュースだ」と続く。実際に報道の現場で言われたのかどうか。高みで笑って見ている視線を感じる

▼日本最大の労働組合組織、連合が労働者からデモをかけられた。このおかしさを感じる人はどのくらいいるか。デモは、要求貫徹や抗議の集団示威行動だが、かつて労組の専売特許であったことを知らない世代も増えているのではないか

▼労組の命綱、ストライキ権確立のニュースにもほとんどお目にかからなくなった。県内では平成八年ごろ、勤務時間中の組合活動を巡って三教組(県教職員組合)が確立したのが最後ではないか

▼実力行使をしなくなった労組が労働条件を改善していくには話し合いしかない。賃金削減を求められたとしても、代替要求を一つでものませて受け入れるというパターンが定着したのは、先の県職労の示す通りだろう

▼連合の「残業代ゼロ法案」修正受け入れが、いつになく産別労組の異論で機関決定にならなかった。〝労働貴族〟とも称される主要労組幹部らもさすがに組合員に説明しにくかったか

▼春闘が日本の賃上げ相場を決めていたころ、筋書き通りの妥結までどう運動を組み立てていくかが幹部の工夫の見せ所だった。ぎりぎりの交渉で勝ち取ったかを演出することが組合員の理解を得ることであり、自分らの地位の安泰につながった

▼実力行使に代わるぎりぎりの交渉の演出をする知恵も出さず地位の安泰を図る。その拙速さが混乱の原因だろう。労組の衰退を物語る話ではある。