伊勢新聞

2017年7月20日(木)

▼民進党の蓮舫代表が戸籍謄本の一部を公開した。「政権に強く説明責任を求める立場を勘案した」ためという。勘案を決意したのが代表就任の日ではなく、都議選敗北の日だったというのは、その理由に説得力を持たせるのには遺憾なことだった

▼グローバル時代を反映し、日本の各界でも、父母の出身地が外国の日本人が活躍している。目にとまる機会が多いのはスポーツ界だが、ファンである大相撲にたとえると、蓮舫代表の公開ぶりは、元横綱朝青龍や横綱白鵬などが観客の気に入らぬ言動をした時に「モンゴルへ帰れ」とやじられる光景と重なって、胸が痛んだ

▼公開に至る直接のきっかけは、都議選後に一部議員から敗北の一因であるかの指摘を受けたことや、総括で批判が相次いだためという。二重国籍の判明は昨年9月。日本国籍選択宣言をした同10月には戸籍公表を拒否している。それから都議選敗北まで、党代表として、今まで以上に国籍を問う視線を感じたのではないか

▼蓮舫代表が二重国籍になったのは、日本の国籍法が父系主義で、改正への経過措置の中で日本国籍を取得したからである。指摘されるまで台湾籍を確認しなかったことを陳謝したのは政治家として当然だが、国籍規制緩和の流れの中で、翻弄(ほんろう)された一面がある

▼日本人は普段は差別意識をむき出しにすることは少ないが、事が起こると必ず出自を言い出すのは大相撲を見ていても分かる。稀勢の里ブームと言われる最近の相撲人気もその裏返しと言えなくもない

▼蓮舫代表の公開が、説得力は弱くてもその説明通りであることを願う。