伊勢新聞

2017年7月16日(日)

▼先には残業時間の月百時間上限を容認、今度は高収入の「高度プロフェッショナル」を残業代支払いから外すなどの労働基準法改正案を承認―連合は、このところ政府の働き方改革の推進機関の趣がある

▼いずれも「とうていあり得ない」などと当初は強く反発し、反対派のリーダー的存在となった上で、土壇場で寝返る形。組織率が二割弱に落ち込み、労働者代表などとはとうに言えなくなっているのも分かる気がする

▼残業百時間を認めなければ、上限規制がない業種の「青天井」状態が続き、「高度プロ制度」を容認しなければ、健康確保措置が「不十分なまま改正案が成立してしまうことは耐えられない」からで苦渋の選択という。不都合な事案を持ち出して大事なことを葬るのは役人の手口だが、闘いを忘れた労組は、物分かりのよさで政府にすり寄る以外、組織の体面を保てなくなっているのかもしれない

▼連合の中核労組は能力成果主義的な査定を受け入れている。賞与も業績と連動型だ。かつて春闘は、好調な企業や単産の高水準な「回答」を相場に他企業、他単産に波及させ、全体の高水準を獲得した。個人の能力、成果を査定する仕組みでは、どんなに高水準でも影響は正組合員にとどまる。春闘の意義はほとんどなくなっているが「高度プロ制度」はそれに拍車をかけることになる

▼退職勧奨やセクハラ・パワハラなど、現代の労働問題に能力成果型労組は相談にも乗れなくなっている。専門職を名目に残業代ゼロが広がっても、連合は労働者の味方になれまい。政府の諮問委員派遣機構でも目指すか。