伊勢新聞

2017年7月15日(土)

▼31歳の主事がわいせつ容疑で逮捕されたと思ったら、今度は飲酒運転で43歳の主査が現行犯逮捕か。「夏の交通安全運動など、飲酒運転の撲滅や交通事故の防止に県をあげて取り組んでいる中、県民の信頼を損なった」と鈴木英敬知事が深謝している

▼休暇を取って昼前、津市安濃町草生の自宅で「缶酎ハイを飲ん」で車に乗り、亀山市に食事に出かけた。帰る途中に接触事故を起こしたらしい。交通安全運動など別にしても、改正道交法で飲酒運転の厳罰化が進む中、ダメージが特に大きい県職員が、極めて普通の生活の延長線で飲酒運転していたのに驚く。「職員にも周知徹底を図っている」という知事コメントに、首をかしげたくなるのである

▼安濃町草生は山裾の草深い田舎である。近くに食堂どころか商店もなく、バスなど公共交通機関もない。グリーンロード沿いのコンビニも車がなくては一時間程度かかるのではないか。車が生活に欠かせない。平日の休暇のちょっとした食事も亀山市へ走るのが一番近かったのだろう

▼大げさに言えば、車がなければたちまち憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」が損なわれる。飲酒公務員だけではない。三重交通が運転免許証自主返納者にバス乗車割引の特典を与えているが、過疎地の恩恵はないようなものだろう

▼老朽団地も人口が減り、空き家が増え商店が撤退し、バス路線も廃止。市街地の中の過疎化が進んでいる。県職員の不心得者への「厳正な対処」(知事)は当然として、県政のリーダーとしての目配りは、それだけで終えてはなるまい。