県議会の議員定数を検討する選挙区調査特別委員会(三谷哲央委員長、15人)の議論が停滞している。特別委は次回選挙から定数を六減とする現行条例の見直しを検討してきたが、24回の会合を重ねた今も委員らの意見がかみ合わず、特別委が廃止されるか、条例改正に至るかさえも不透明な情勢だ。さらに、特別委が提示した正副委員長案の定数は現行条例より多く、全国で定数削減の傾向にある中では「改革に逆行している」と捉えられかねず、県民への説明を怠れば県議会の信頼低下も免れない。
(県政・海住真之)
県議会は平成26年5月、次々回の選挙から定数を五一から四五に削減する条例を可決したが、「国勢調査の人口などを踏まえて不断の見直しをする」と付帯事項を設けた。27年の改選後、この事項を根拠に議員から要望が上がり、特別委を再び設置した。
特別委は当初、定数を見直すことの是非も含めて検討。設置から半年後の昨年12月、ようやく見直しの方向で議論することが決まったが、それ以降も議論はたびたび平行状態をたどり、設置から一年後の5月に示された正副委員長案も合意は得られなかった。
「きょうで(委員会を)閉じようと思っていた」。6月30日の会合で、三谷委員長はそう語った。舟橋裕幸前委員長が提示した正副委員長案を中間案に位置付けて議論することに対し、第二会派の自民党(17人)が前回の会合で反対を表明したからだ。
「正副委員長案の問題点を議論すべき」との声が上がり、結局は継続を決めたが、三谷委員長は正副委員長案の修正などを経てパブリックコメント(意見公募)の実施も提案。具体案がまとまらない中で県民の意見を募ろうとすることに、ある委員は首をかしげた。
議論が滞る背景にあるのは、そもそも見直しに否定的な委員が多いことだ。特別委の会合では、少数会派から「現行条例下で一度も選挙せずに定数を変更するのはいかがなものか」「一度は決めたことを変えるなら、それなりの根拠が必要」との指摘が根強い。
一方、定数の見直しを目指す委員らは、人口減少が深刻な南部地域の声を反映させることを目的に据える。見直しに積極的案西場信行議員(自民党、九期、多気郡選出)は「定数を変更して選挙すれば二度と戻せない。議論するなら今しかない」と訴える。
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正副委員長は尾鷲市・北牟婁郡(定数一)と熊野市・南牟婁郡(同)を合区して定数を三に増やすほか、度会郡と多気郡の両選挙区を一ずつ増やして二とする。また、現行条例が定めた鳥羽市と志摩市の合区も解消するなどし、結果的に定数は現行条例より四議席増える。
しかし、全国的に地方議会は定数削減の傾向。衆院でも、総定数を戦後最少となる十減の四六五とする改正公選法が成立したばかりだ。そんな中で、現行条例よりも議員定数が増える方向で議論している特別委は「改革に逆行している」との批判も受けかねない。
津市議会も6月28日、次回選挙から議員定数を三六から三四に削減することを決めた。津市議の一人は「地域の声を届けるために議員は必要だが、人口減少や財政をもっと考慮すべき。県議会だけが定数を増やそうとするることには納得できない」と話す。
正副委員長案が一票の格差を拡大させていることも懸念材料だ。現行条例で議員一人当たりの人口が最も多い亀山市と、最も少ないのは伊賀市の差は一・六六倍。これに対し、正副委員長案では鳥羽市が最も少なくなり、一票の格差は二・五八倍に拡大する。
定数の変更は周知期間を設ける必要があるため、議論のリミットは遅くとも残り半年ほど。仮に次回以降の会合で新たな案が提示されたとしても、合意が得られなければ議論が堂々巡りとなるのは確実だ。実のある議論と委員長の英断が求められている。