伊勢新聞

2017年7月9日(日)

▼四日市市の生後間もない女児の死体遺棄事件で女児の母親、19歳の元会社員が殺人の疑いで再逮捕された。この世に生を受けたばかりの命が、もっとも愛されるべき母親の手によって奪われたというのである。胸が痛くなる展開である

▼伊賀市で十年ほど前、女子高生がやはりトイレで出産し、遺棄した事件があった。誰にも相談できず、さぞ苦しかったに違いないと書いた記憶がある。その分、今回ほど乳児への思いが至らなかった。慚愧(ざんき)に堪えない

▼旧の厚生省と労働省が統合して、局も児童対策と女性対策が一緒になった結果、けんけんがくがくの論戦が絶えなかったと村木厚子元厚労相事務次官が話していた。介護殺人も、殺された側より、加害者に時として同情が集まったりする。どちらの側に立つかで見方は大きく変わるものに違いない

▼相模原刺殺傷事件から一年。現場のやまゆり園の再建計画を巡り、駅から二キロ離れた山あいの現地に従来通り百人規模の施設を公表した県に対し、隔離政策を固定し「共生の理念に反する」と障害者団体が反対し市街地近くでの小規模グループホーム形式を提案。犠牲者の匿名発表を求めた家族の会は「せっかくここにたどりついたのに」と原状復帰を希望。調整が続いている

▼最初はぎすぎすした厚労省の局内だが、互いに相手の考えを理解するようになって、むしろ妙案が出るようになったという。福祉や命の問題も、当事者と家族、男性と女性など、支援体制や保健体育の授業などが縦割りになっていないか。どう考えていくかみんなで共有されれば、悲劇は防げる。