伊勢新聞

2017年6月30日(金)

▼中国・三国時代の英雄・関羽に留守を委ねる軍師・諸葛亮孔明が魏の曹操と呉の孫権が同時に攻め込んできたらどうするかと問う話がある。関羽いわく。兵の半数で一方を守り、残り半数を率いてもう一方へ打って出る。「危ない、危ない」と孔明。まず呉と和睦し、協力して魏に当たれと説く

▼東芝の迷走を見ていると、この話がいつも頭をよぎる。東芝は、半導体メモリー事業で提携していた米ウエスタンデジタル(WD)を不正競争防止法違反などを理由に提訴した。子会社「東芝メモリ」の売却を巡る紛争は泥沼化し「日米韓連合」との売却交渉にも不透明さが。一方、監査法人との溝の傷跡は深く、上場維持も見通せない

▼関羽の逸話との違いはどちらも敵というより味方に近い関係がこじれたことだ。そもそもの不正会計問題も、西田厚聡、佐々木則夫両元社長の対立が拍車をかけ、経団連人事への確執がきっかけなどといわれる。解体の危機にまで追い込まれた米原発建設子会社CB&Iストーン・アンド・ウェブスター(S&W)の巨額損失も、提携先との係争の解決策として買収したことの見通しの甘さからだ

▼鈴木英敬知事はこれまで再三、県が要請してきた雇用の維持などを確認できたと言い続けてきたが、優先交渉先が産業革新機構を中心とする「日米韓連合」に決定した21日、世耕弘成経産相は「技術流出防止や雇用確保で一定の条件を満たした」と語った。ほかでは雇用確保は不安と認識していたことになる

▼知事との信頼関係は維持できるかどうかの見通しは、まだ確定したとは言えない。