伊勢新聞

<まる見えリポート>変わる結婚式 伊勢の「ウェザイン」

結婚式のあり方が変わりつつある。挙式や披露宴を開かない「なし婚」がある一方、自分好みの演出を見せる「こだわり婚」を選ぶ人もおり、需要はさまざま。そんな中、新郎新婦の要望に沿った自由度の高い結婚式を提供する伊勢市神田久志本町のウェディングプロデュース業「ウェザイン」が全国的にも珍しい取り組みとして人気を呼んでいる。

(倉持亮)

 「ウェディングをデザインするという意味で『ウェザイン』。新郎新婦と徹底的に話し合い、カップルごとにテーマを設け、その人たちだけの結婚式を提供する」と話すのは、同社の東山迪也社長(30)。屋外での挙式・披露宴を手掛けるなど、斬新なアイデアが人気の秘訣(ひけつ)だ。

例えば、農家同士のカップルの挙式では「満腹ウェディング」と題し、会場を二人の畑に設定。牧師がトラクターに乗って登場したり、料理の食材は新郎新婦が耕した野菜を使ったりするなど「自分たちだけの結婚式」をプロデュースしている。

このほか、公園の広場に特設テントを設けた「テントウェディング」や廃校の教室、沖縄の浜辺、伊勢市の観光文化会館など、場所を選ばない結婚式を次々と企画。旅するウェディングとして注目を集め、県外からの依頼もある。

同社の特徴は専属の料理人を雇わず、会場の地元の飲食店などに協力を得るスタイル。安さにこだわっているわけではないが、人件費などの調整がしやすく、価格面でも顧客の要望に寄り添える。

今年3月には、式場「FOLK FOLK」(同市神田久志本町)をオープン。結婚式場の外観は、白色を基調とした建物が多い中「落ち着いた雰囲気を出したい」とあえて黒色にこだわった。入り口付近には植物を置き、殺風景にならないよう気を配っている。

若者の結婚への意識も変わりつつある。今年3月、同式場を利用した一組目の夫婦・箸中大将さん(28)、茉也加さん(25)=津市栗真町屋町=は結婚が決まった際、式を挙げる予定はなかったという。大将さんは「SNSで見かける結婚式の写真は、同じようなものばかり。普通の結婚式は挙げたくなかった」と話す。

式では、出席者一人一人にメッセージカードの入った風船を用意。風船を割ると、メッセージが読める仕組みだ。大将さんは、はかま姿でブーツを履くなど個性的な衣装で登場。「思い出に残るような変わった式にしたかったので大満足。打ち合わせも毎回楽しみにしていた」と語る。

一方、同社は新郎新婦の両親への配慮を重視している。親族や出席者が置き去りにされては、本当に楽しい結婚式は実現できないと考えるからだ。東山さんは「カジュアルに見えても押さえるところは押さえないといけない。自由度が高いからこそ気を付けている」と強調する。

今後は新婚旅行の企画や子どもが生まれた際の記念撮影の演出なども手掛けたいという東山さん。式場にはコーヒースタンドを設けており、挙式後に再訪する夫婦もいると見込んでいる。「念願かなって自前の『ハコ』も持てた。新郎新婦の思いを詰め込める式場にしたい」と張り切る。