伊勢新聞

2017年6月16日(金)

▼第三次中曽根康弘内閣(昭和六十一年)で厚生大臣(当時)に初入閣した斎藤十朗参院議員の津市での祝賀会で、藤波孝生前官房長官が直前の死んだふり解散の裏話を得々と語った

▼違憲判決を受けた公職選挙法改正案の「三十日間周知期間」設定で衆参同日選を断念したと見せかけ臨時国会召集策で実施した解散。県庁の記者室を訪れた中井洽衆院議員が「どう考えても同日選はできないはず」と自分に言い聞かせるように語っていた。いわば〝だまし〟の手法を、ウソは言わないと記者に評判の藤波前官房長官が悪びれもなく「死んだふり」の言葉を使って語るの不思議なものを見る気持ちで聞いた

▼委員会採決を省略して改正組織犯罪処罰法を成立させた自民党幹部らも今、勝利への高揚感で満ちているのではないか。「暴挙」「民主主義の否定」と言っても「中間報告」はルールにある。前例もある。国会運営の責任政党として、条件が厳しいほど成し遂げた満足感は大きいに違いない

▼自民党絶対多数時代の県議会で、党県連幹部が地域紙に〝三悪人〟と書かれ、ちょっとして話題になった。県議危篤の報が入った瞬間に次期候補者選考に入る。原発調査推進決議も、審議拒否で合意していた他会派の一角を一晩で寝返らせた

▼悪人と言えば悪人ではある。自会派を満足させ他会派の攻勢を封じて円滑に議会運営をする。その思考と対応を常に求められていた。他会派側が意表を突かれるのは当然でもあった

▼伯仲の今の議会には起こりっこない。「暴挙」は絶対多数の議会構成の中で必然的に発生する産物である。