四日市市出身の映画監督、瀬木直貴さん(54)の最新作「マザーレイク」が十七日から名古屋市東区の名演小劇場で上映される。二十四日には、十二時半の回上映終了後に、瀬木監督の舞台挨拶が予定されている。
滋賀県の琵琶湖が舞台で、十一歳の少年が伝説の生物「ビワッシー」探しを通じて、家族や友人とふれあい、成長していく姿が描かれている。キャストは内田朝陽さん、鶴田真由さん、高橋メアリージュンさん、別所哲也さんなど。瀬木監督に作品へのを想いを聞いた。
―滋賀を舞台にしたきっかけは。
「カラアゲ★USA」という作品に出演してくれた俳優がキャンピングカーで寝泊りし、町が映画によってどう変わっていくのかを見ていたんです。彼が「映画は、人の目を輝かせる非常に大きな武器になる」と話していて、「故郷の琵琶湖を舞台に映画を撮って欲しい」と依頼を受けました。
―映画への想いは。
それで滋賀に行ったのですが、すぐに映画を撮ったということではなくて。私は、映画を作る制作プロセスを通して地域社会をよりよくする、元気にするという目的がある。そして全国に、あわよくば世界に持っていけるクオリティの映画を作るのがミッション。これまで色々な地域で模索して成功、失敗を繰り返してきたのですが、まずは地域の課題を見つけ、その課題に答える形を物語にしていきたいと思っている。
―「マザーレイク」が生まれるまでは。
滋賀県内外の方にアンケート調査をしたところ、9割の方が滋賀県といえば琵琶湖と回答。それから色々調べていくと、滋賀県民は、牛肉の消費率、貯蓄率、パソコン・スマホの普及率が全国一位ということが分かった。
おいしい近江牛、お米、お酒がある。要は滋賀県は豊かなところなんだと気づいた。ですから、地域の課題があったとしても見えにくく、企画が難しかったのです。
ヨソモノである私が、地域の唯一無為の価値をどのように見つけていくか。三つの要素にぶつかりました。一つは林間学校。滋賀県は、小学校時代に学習航海船に乗って、泊まったりする経験をするのですが、十年で約50万人が経験しているそうです。子どもを主人公にして、夢を追い続ける大切さを訴えたいと思った。
二つ目は、竜神伝説があること。ネス湖のネッシーのような伝説の生物は、大人は信じませんが、子どもって信じたりしますよね。その純粋さ。
三つ目は、高度成長期に琵琶湖は汚染されてしまいましたが、改善するべく石鹸作りをはじめたという歴史がある。環境に敏感に反応する人が多いことも分かった。水の大切さを全国に伝えるための豊かさとは何か、我々の文明のあり方を変えていくきっかけが滋賀にはあるのではないかと思いました。
―撮影の思い出は。
公開オーディションで選ばれた子役たちとは、一緒に跳んだり跳ねたりして遊びながら、演技指導をしました。スキルがありませんから、役の中の感情を掘り起こす指導を今回も丁寧にしました。
また、風光明媚なところは世界中にありますが、閉鎖された琵琶湖はどこから撮っても人の営みが映り込んでしまう。生活と一体となった美しさをどう撮るかも考えましたね。
―映画を観る人へのメッセージを。
作品を通じて、家族との絆を再確認していただければと思います。