伊勢新聞

2017年6月14日(水)

▼どちらも尾鷲市の将来への危機意識を訴えていたが、処方箋はやや加藤千速氏が具体的だったか。企業再建の実績も、教育行政や議員経験者より、有権者の目に頼もしく映ったか。ダブルスコアの大差で、市政未経験の加藤氏に託した

▼かつて3万人を超えた人口は今1万8千人。地方自治法上の市制の条件はとっくに崩れ、年間約400人の減少ペースに歯止めがかからない。起死回生に特効薬はないに違いないし、選挙戦では両候補とも各界各層との話し合いを強調していた。市長の手腕だけで解決できる段階ではとうにないのだろう

▼高知・大川村が議会を廃止し、有権者が議案を直接審議する「村総会」の設置を検討した。和田知士村長は「どうすれば議会を維持できるか勉強したい」。すなわち、村政に携わる者だけで何とかできる段階ではない、村民みんなで村のあり方を考えていかなければならないということだろう。地方の多くの自治体に共通する課題と言われる

▼尾鷲市長選と同日選で、市議会議員十三人も決まった。新人五人、前職八人の構成は、議会の存続に懸念はないようだが、内訳は七期以上が五人で二分化傾向が見えなくもない。年齢別では六十歳以上が九人で、五十代が二人。三十九歳の新人が誕生したとはいえ、有権者各層の代表が議会に集結しているかどうか

▼高齢化が進む大川村だが若手がいないわけではない。報酬が15万円で、兼業が前提になる議会活動に到底時間も体力もさけないというのだ。尾鷲市はどうか。多様な有権者代表が議会に集う仕組を考える時期が迫ってはいまいか。