▼「いじめは絶対許さない」「大人が子どもを守る」というメッセージを打ち出すのだそうだ。来年三月議会に提案するという「県いじめ防止条例(仮称)」について鈴木英敬知事がこの六月議会で明らかにした
▼半年先の提出議案を聞かれもせぬのに議会で予告するのも奇妙な話だが、メッセージは誰に向けられるのか。「子どもの問題は大人の問題」と喝破したのは鈴木英敬知事だ。「いじめや暴力を許さない子どもたちの育成について」がテーマの昨年十月の県総合教育会議で、未熟な子どもたちが避けることができない衝突を「大人がしっかり導いて」不安を解消してやらねばならないと語った
▼一方、「重大事態」になった全国例では、地域や家庭での大人の言動が子ども社会に持ち込まれたとの指摘もある。「子どもの問題は大人の問題」はこちらの意味で遣われることが多い
▼「いじめは絶対に許さない」も前田光久県教委委員長と山口千代己教育長(いずれも当時)の見解が分かれた昨年一月の県総合教育会議を思い出す。「いじめは根絶できない」として、あるを前提の対応こそ重要とする前田委員長に対し、山口教育長はどこでも、誰にでも起こることとメッセージ性は別とし、根絶できないと言ってしまったら子ども、保護者への責任が果たせないというのだ
▼具体策が増す改正いじめ防止対策推進法に対し、補完する役目の県条例がメッセージ性、すなわち抽象的スローガン、県教委の心意気が柱になりはせぬか。結果的にいずこも同じ閉鎖、隠ぺい体質の継続にならぬか。大きなお世話ながら―心配。